できるだけ指値

ETFの中には出来高の小さいものもある。例えば、1391はスイスの株価指数に投資できるETFだが、とにかく板が薄い。買気配と売気配の幅が大きいから、成行で注文を入れると不利な価格で約定することがある。

とにかく指値で注文するほうが良いかと思っている。板を見てから注文しなきゃならないので面倒ではあるが。

逆に言うと、指値で待ち構えていると有利な値段で約定することもある。特に、寄付と引けには成行注文がいくらかあるので、うまくすれば安く買ったり高く売ったりできる。

日経平均やTOPIX、S&P500など、出来高の多いものはあまり気にしなくて良いが、マイナーな指数を取引する際には注意しておくべきだろう。

埋没コスト

 埋没コスト、あるいはサンクコストとも言うが、これには気をつけなければならない。埋没コストとは、回収不能なコストを意味する。例えば、ある株に投資をしたが価格が下がってしまい、損失を確定させたとしよう。その損失は、すでに回収不能だ。しかし、人間はその株で負けた分を取り戻したくなる。

しかし、過去にその株で負けたことが、今後の株価の推移にどれくらい影響するだろうか。まったくないとは言えないだろうが大きなお金の動いている相場では誤差に過ぎない。

ある株で負け続け、それでもその株に投資し続けていた場合に、相場の神様が出てきて、「そこまで投資し続けるのなら、少しは儲けさせてやろう」と言ってくれれば良いが、まあ、そんなことはない。負けを取り戻そうとして冷静さを欠き、余計に負けていくのが相場だ。

過去の負けは埋没コストだから取り返すことはできない。

負けても勝っても、過去の勝敗は忘れて、冷静に相場を分析するほうが良い。冷静になれるまで休むべし。


確証バイアス

バイアスとは偏りのことだ。人間が情報を集める際に、自分の考えを支持する情報をより多く集めてしまうことを指す。

例えば、ある企業の株を持っていたとする。それを持ち続けたいと思うときに、その株の価格が上がる理由ばかりを探し、下がる原因になるような情報にを集めたがらない。

常に冷静でいるというのは、人間には難しいことだ。常に中立な立場で情報を集めなければ正しい判断はできないわけだが、それが難しい。

短期売買ではロスカットラインを定めて取引するのが普通だ。持っている株の価格が下がって含み損を抱えているとき、ロスカットラインに達すればとにかく売らなければならない。これは誰もが認めることだろう。

しかし売りたくない。買ったのは上がると予想したからであって、それを売れは、自分の判断が間違っていたことを認めることになる。誰も自分が間違っているとは思いたくはない。ここに情報バイアスがかかる。

含み損を抱えているときに情報を集めるときには注意が必要だ。掲示板などを読みたくなる。ネット上の掲示板は、誰が書いたのかわからないような情報がたくさんある。それらを読んでいると、今持っている株が上がる根拠ばかりが目につく。

「今は含み損を抱えているけれども、ファンダメンタルズがしっかりしているから大丈夫だ」と思えるような情報が目についたり、「そもそもロスカットラインなど定めなくて良い」というような記事が目についたりする。

自分のしていることをいかに正当化できたとしても、相場はそんなこととは関係なく動く。相場は冷静で残酷だ。ロスカットできなくても、株価は下がり、含み損は膨らんでいく。こんなことを続けていれば、すぐにゲームオーバーだ。

常に冷静で中立な情報収集を心がけることは大事だし、人間は冷静になれないという前提で取引するほうが良い。情報バイアスがかかることを知った上で行動すべきだろう。

例えば、ロスカットラインを守る自信がないのなら、自動売買の機能を使えばよい。逆指値注文とか損切り注文とか、名前は証券会社によって異なるが、ネット証券ならたいてい備わっているはずだ。買った時点で、ロスカット注文を入れ手おけば、バイアスがかかっても問題ない。

ポジションを持つ前にルールを決めて、そのルールを守るという習慣は身につけておく価値がある。

情報収集については、ネットで情報を集めたほうが良い場合もあるが、ネットばかりに頼るべきではない。ネット上には情報が多すぎて自分のポジションを正当化できるだけの情報はいくらでも見つけられる。都合の良い記事だけ読むのには最適だ。

新聞というと古臭いように思うかもしれないが、投資には適している。良いところは、自分で情報を選んだのではないという点だ。自分に有利な情報だけでなく、不利な情報にも目を通しやすい。

休むも相場ですな

初心者でも使いやすい証券会社や取引業者はあるだろうが、初心者だから値動きが初心者向けということはない。どの証券会社を使っても、同じ時点での株価は同じ価格だ。もし違えば何か問題を抱えていて、投資家に不利なのではないかと。FXなどの店頭取引なら、業者によって多少の違いはあるが、大きな違いはない。

ツールの使いやすさや取引にかかる手数料などは取引業者によって異なるが、値動きはほぼ同じ。つまり、市場は一つだ。

スポーツやゲームならアマチュア向けの大会というものもあるだろう。しかし、投資の世界には、そういう便利なものはない。いつもプロのトレーダーと同じ相場で取引しているという感覚が必要だ。

相場は短期的に見ればゼロサムゲームだ。つまり、誰かが儲けた分だけ誰かが損している。最近投資を始めた人が、毎日毎日相場に立っているプロのトレーダーと同じ相場で稼げるとは思わない。

なら稼ぐことはできないのかというと、そうではない。プロではない個人投資家だからこそのメリットを生かせば良い。プロじゃなくて良かったと思えることはいくつもある。

何より大きなメリットは、休み放題ということ。しばらく相場に関わっていれば、稼げそうかどうかが、何となく分かってくる。プロはプロだから、どんな時も相場に立たなければならないだろうが、自分の資金を自分で動かしているだけの個人投資家なら、苦手な相場で無理に取引する必要はない。しばらく取引はせず、稼げそうになってから相場に戻ってくれば良い。何年休んでも、誰にも何も言われない。これが一番のメリットではないかと。

キャピタルゲインとインカムゲイン

 投資で得られる利益は2種類ある。その一つがキャピタルゲインだ。利益を得るには、買ったものを買った価格より高く売れば良い。このとき発生する利益はキャピタルゲインだ。信用取引や証拠金取引を使えば保有していないものを売ることができるが、売ったものを買い戻すことによって得られる利益もキャピタルゲインという。売買差益とも言える。

売買では損失が発生することもある。このときの損失はキャピタルロスと呼ぶ。

インカムゲインは、保有することによって得られる利益だ。例えば債券を保有していれば利息を受け取ることができる。株式を保有していれば配当金を受け取ることができる。このように、保有していることによって得られる利益をインカムゲインと呼ぶ。

保有しているだけで損失が発生することもあるが、これを「インカムロス」といいそうな気がしなくはないが、そんな言葉を聞いたことはない。保有コストなどと呼ばれることが多いように思う。

インカムゲインだけを狙って投資するという人がいるかも知れないか、それではあまり儲からないと思う。異論はあるだろうが、投資するならキャピタルゲインを狙うべきだろう。

キャピタルゲインを狙って買い、値上がりするのを待っているうちに配当金をもらい、なかなか値上がりしなかったので諦めて買値で売った結果、キャピタルゲインはゼロでインカムゲインだけが得られた、ということはあるかも知れない。が、最初からそれを狙うけではない。

金や原油などのコモディティは、そもそもインカムゲインがない。だからキャピタルゲインしか狙えない。金地金を自宅で保管するのならともかくとして、たいていは保有コストがかかるのだから、短期売買に用いるべきだ。上昇期待がなくならなくて長期保有になるとしても、常に売り抜けるタイミングを探らなければならないと思う。

純資産倍率 PBR

「純利益」は、ある一定期間に企業が稼ぐ利益であるのに対して、「純資産」は、ある時点で企業が持っている資産の価値を指す。このあたりは、複式簿記で言うところの損益計算書と貸借対照表の関係と同じだ。

株価収益率が純利益の点から株価を評価するのに対して、純資産の点から株価を評価するのが「純資産倍率」、「PBR」と呼ばれる指標だ。

企業A
株価 1,000円
発行済株式数  100万株
純資産 5億円 

企業B
株価 500円 
発行済株式数  500万株
純資産 15億円

まず、「1株当たり純資産」、あるいは「BPS(Books Value per Share)」を求める。言葉通りで、1株あたりの純資産を意味する。だから計算式もそのままで、

BPS = 純資産 ÷ 発行済株式数

となる。企業AのBPSは、

5億円 ÷ 100万株 = 500円 

企業BのBPSは、

15億円 ÷ 500万株 = 300円

となる。純資産で見た場合、企業Aの1株のほうが価値が高い。企業Aの1株は500円の純資産に値するわけで、現在の株価は1,000円だから、 2倍の株価がつけられている。このように、株価が1株当たり純資産の何倍なのかを示す指標が純資産倍率、PBRだ。つまり、

PBR = 株価 ÷ BPS

となる。企業AのPBRは、

1,000円 ÷ 500円 = 2倍 

となり、企業BのPBRは

500円 ÷ 300円 =  1.67倍

となる。純資産について考えれば、企業Bのほうが割安だ。これもPERと同じように、業種によって水準が異なるから、同じ業種の企業同士を比較するのが良い。

純資産倍率は、1倍より小さくなりにくい。例えば、企業Aの株価が下落して400円になったとしよう。発行済株式数が100万株だから、企業Aの株式をすべて買い集めるのに必要なお金は、

400円 ✕  100万株 = 4億円

みにとなる。4億円あれば企業Aの株を買い占めることができる。自分の会社だ。純資産が5億円あるのだから、売却すれば5億円手に入る。4億円支払って 5億円手に入れられれば、差し引き1億円の儲けだ。といわけで、PBRが1倍以下になると、買いが入ると期待されるために上がりやすい。

しかし、PBRが1倍を下回っているから買うべきだと考えるのは良くない。一時的に売られて株価が下がり、そのためにPBRが1倍を下回ったのなら良いのだが、長い間1倍を未満であるような企業は要注意だ。1倍を切ったのに誰も買いたがらないのだから、もしかすると何かあるのかも知れない。注意は必要だ。


株価収益率 PER

 前回の続き。

企業A
株価 1,000円
発行済株式数  100万株
純利益 8千万円 

企業B
株価 500円
発行済株式数  500万株
純利益 1億5千万円

まず、「1株利益」あるいは「EPS(Earnings Per Share)」と呼ばれる指標だ。1株当たりの利益を指す。だから、発行済株式数で割れば良い。企業AのEPSは、

8千万円 ÷ 100万株 = 80円

企業BのEPSは、

1億5千万円 ÷ 500万株 = 30円

となる。 利益をもとにして考えた場合の1株の価値は、それぞれこうなる。企業Aのほうが、1株の価値が高いといことが分かる。

では、どちらが割安なのかというと、企業Bは企業Aと比べると、株価は半分だから、もしもEPSも半分なら同じ価値を持つと言っても良い。が、EPSは半分以下だ。株価の割には利益が小さいと考えれば割高なのだろう、と考えることができるが、しかしこれを毎回考えるのは面倒くさい。だから、比で考えてしまうと、数字の大小で比較できるかは楽だ。これが「株価収益率」、「PER(Price Earrings Ratio)」、「P/E」と呼ばれるものだ。

PER  = 株価 ÷ EPS

この式から、株価が高いとPERは大きくなることが分かる。つまり、PERが大きいほど割高だ。企業AのPERは、

1,000 ÷ 80 = 12.5

となり、企業BのPERは、

500 ÷ 30 =  16.7

となる。だから、企業Aのほうが割安だ。單純にPERが小さい方が割安と覚えておいても良い。計算式から考えるとPERの意味は、株価が利益の何倍か、ということである。だから、PERの単位は「倍」を使う。

利益というのは、通常は1年間の純利益から計算するから、例えばPERが10倍であれば、1年間の利益の10倍の株価で取引されているわけだから、「10年分買われている」などと表現される場合もある。

比で考えるためには、どちらをどちらで割っても良いわけだから、計算式を

EPS ÷ 株価

としても良さそうだ。実際、これは 「株式益回り」と呼ばれる指標として存在し、使われることもある。が、株式投の場面ではPERのほうがよく使われる。

PERは相対的な使い方が良いと、私は思う。PER10倍以下なら安い、というように、水準をだいたい把握しておくことは必要かもしれないが、業種によって利益の出しやすさというのは違うのだから、PERも業種によって違ってくる。まったく違う業種の2つの企業を比較して、こちらの企業はPERが小さいので割安だ、と考えるのはどうだろう。ある業種があって、その業種ではPERはだいたい13倍から15倍なのに、ある企業は10倍しかない、だから割安だ、というように考えるのは妥当だ。あるいは、ずっとPERの大きった企業が一時的に小さくなっていれば、割安だから買うべきかどうか考えてみる、というのもアリだ。

しかし、PERが小さいから買うべきだ、と考えるべきではない。PERには予想PERと実績PERがあり、予想PERを使うことが多い。計算するときの純利益の数値として、今期の予想の数値を用いるのが予想PERで、前期の確定した数値を用いたのが実績PERだ。予想PERは企業側が発表する業績予想に基づいて計算される。だから、発表されると再計算することになる。

PERが小さいからずいぶんと割安と判断するまでは良いが、その理由を考える必要はある。業績とは関係のない理由で売られて株価が下がっているのが原因なら、問題なく買えばよい。しかし、その企業や業種で何か起こっていて、業績の悪化が見込まれることもある。予想PERに反映される前に株価が下落しているのなら要注意だ。

できるだけ指値

ETFの中には出来高の小さいものもある。例えば、1391はスイスの株価指数に投資できるETFだが、とにかく板が薄い。買気配と売気配の幅が大きいから、成行で注文を入れると不利な価格で約定することがある。 とにかく指値で注文するほうが良いかと思っている。板を見てから注文しなきゃならな...